伊勢大神楽

滋賀県

日野   

あかねさす紫野ゆき 標野ゆき 野守は見ずや 君が袖振る 額田王(万葉集)

伊勢大神楽の渋谷章社中の新年は馬見岡綿向神社(うまみおかわたむきじんじゃ)の元旦祭からはじまります。午前4時30分、日野町を走る旧伊勢道の御旅所前に集結した社中は、親方の「いくぞ!」の掛け声に合わせて歩き始めます。日野町は近江商人発祥の地のひとつで、その中心に在するのが綿向神社。1200年の歴史を有し、地元の人から「大宮さん」と親しまれています。その大鳥居をくぐり、広大な境内に入ると、かがり火が真っ赤に燃えています。午前5時、綿向神社宮司と氏子総代が本殿前に静々と進みます。本殿の大戸を開いて祝詞、玉串奉賛の後、獅子舞の二頭の御頭と社中一同がお祓いをうけます。本殿の周囲には厳かな神事を見ようと氏子衆が集まっています。社中は氏子衆の前で、「鈴の舞」「神来舞」などを奉納し、一年の無事を祈願します。

 

湖東  

白真弓斐太の細江の菅鳥の妹に恋ふれか寐を寝かねつる (万葉集)

滋賀県彦根市高宮神社の節分祭で夜神楽を奉納します。節分祭は新春を迎える神事。厄や疫病の象徴であった「鬼」を追い払うことで一陽来復・厄除開運・病魔退散を願ったのが始まりです。旧暦では大みそかでしたが、新暦に代わった現代では2月3日。高宮神社では厳しい寒さの中、多くの参拝者が訪れます。神殿のご祈祷神事の終わりと同時に大神楽のお囃子が始まります。まずはじめに鈴の舞でお浄めした後、四方の舞、吉野舞、神来舞を奉納。最後に花魁道中で締めくくります。

 

 

 

湖北  

あかねさす朝日の里の日蔭草 豊の明かりのかざしなるべし 大中臣輔親(新古今和歌集)

新年が明けた1月から3月にかけて湖北地域ではあちらこちらの村で「おこない」が行われます。この行事は最も厳粛な神事で、当家を中心についた鏡餅を食べることで1年の幸福を願うそうです。一説によると鏡餅は先祖の霊魂を象徴するとか。また村によっては木の枝に小餅をたくさんつけて豊作を願います。「おこない」は先祖の霊を祀るとともに五穀の豊穣を祈願する大切な年頭行事なのです。渋谷章社中では毎年「おこない」神事において神楽を奉納。直会の席では神楽舞と放下芸を披露し場を盛り上げます。